CeD Labo · 論文要約

同じマグネシウムでも吸収率が違う|クエン酸 vs 酸化を比べた試験

サプリの棚に並ぶ「マグネシウム」。

実は、パッケージに同じ「マグネシウム」と書かれていても、体への入り方がまるで違うことがあります。

その差を、実際に人間の体で測って比べたのがこの研究です。(Kappeler et al., 2017 / 掲載誌:BMC Nutrition)

安いサプリを選ぶ前に、知っておきたいデータです。


どんな疑問から始まったか

マグネシウムのサプリには、いくつかの「形(化合物の種類)」があります。代表的なのが——

  • 酸化マグネシウム:安価で、1粒あたりのマグネシウム量が多い
  • クエン酸マグネシウム:有機酸と結びついた形

含有量だけ見れば酸化マグネシウムが有利。でも、「飲んだあと実際に体に吸収される量」はどうなのか?

含有量と吸収率は別物です。これを直接比べたのがこの試験でした。


どんな実験をしたのか

非常に丁寧に設計された試験です。

・対象:健康な成人男性 20名(白人・平均28歳) ・設計:ランダム化・クロスオーバー試験 ・投与:1回300mg(元素換算)を単回(クエン酸・酸化の両方を順番に試す) ・測定:投与後24時間の尿中マグネシウム排泄量

ポイントは「クロスオーバー」という方法です。同じ人がクエン酸も酸化も両方試すので、個人差の影響を受けにくく、純粋に化合物の差を比較できます。

さらに工夫があります。試験前に、参加者へ1日500mg(100mg×5回)のマグネシウムを5日間与えて、体内の貯蔵をいっぱいに満たしておきました(飽和フェーズ)。食事のマグネシウム量も期間中そろえています。

なぜこんなことをするのか?

体が「足りない」状態だと、吸収したマグネシウムをため込んでしまい、尿に出てきません。あらかじめ満タンにしておけば、吸収された分はそのまま尿に排出される。だから尿の量を測れば、吸収率を正確に評価できる、という理屈です。


わかったこと

単回投与後24時間の尿中マグネシウム排泄量を比べた結果——

クエン酸マグネシウム:7.2 mmol 酸化マグネシウム  :6.7 mmol 差 0.565 mmol(95%CI 0.212〜0.918、p=0.0034

クエン酸型のほうが、吸収された量が統計的にはっきり多いという結果でした。

さらに血中マグネシウム濃度を見ると、投与後2〜6時間の各時点でクエン酸型が有意に高い値を示しました。尿でも血液でも、クエン酸型の吸収の良さが裏づけられた形です。

一方で、白血球や赤血球など細胞内のマグネシウムには有意な差はありませんでした(単回投与では細胞内まで差が出にくいためと考えられます)。

研究は、有機化合物であるクエン酸マグネシウムのほうが吸収率(バイオアベイラビリティ)が高いと結論づけ、食事からのマグネシウム補給を最適化するにはクエン酸型のほうが適している可能性を示しました。


なぜクエン酸のほうが吸収されるのか——カギは「溶けやすさ」

この差は気合いや体質の問題ではなく、**化学的な「溶けやすさ(溶解度)」**で説明できます。

マグネシウムは、腸で吸収されるためにまず「水に溶けた状態」になる必要があります。溶けなければ、吸収されずにそのまま素通りしてしまう。

クエン酸(有機酸)と結びついたマグネシウムは、無機物である酸化マグネシウムよりも水に溶けやすい——この溶解度の差が、吸収率の差につながると考えられています。本研究の著者らも、「無機のマグネシウムは有機のマグネシウムほど吸収されやすくない」という従来の見解を、今回のデータが裏づけたとしています。

※補足:この論文とは別の研究では、実際に体に取り込まれる割合(バイオアベイラビリティ)は酸化マグネシウムで数%程度、クエン酸など有機型でその数倍とする報告もあります。「含有量が多い」酸化マグネシウムも、その多くが吸収されずに通り過ぎている可能性があるわけです。


「酸化マグネシウムでお腹を下す」のはなぜか

ここまで読むと、酸化マグネシウムの“あの作用”の理由も見えてきます。

吸収されずに腸に残ったマグネシウムは、腸の中に水を引き込みます。これが便をやわらかくし、量が多ければ下痢につながる。

実は酸化マグネシウムが便秘薬として使われるのは、この「吸収されにくさ」を逆手に取った仕組みです。つまり——栄養補給目的には吸収率の低さがデメリットになり、便通目的にはそれが効果になる。同じ物質でも目的次第で評価が逆転します。


この結果をどう読むか

いくつか限界もあります。

  • 対象は健康な白人男性20名のみ。女性や高齢者、体質の違う人での結果は別途検討が必要
  • 単回投与の試験であり、長期間飲み続けた場合の差は本研究の範囲外
  • 事前に貯蔵を飽和させた特殊な条件下での測定

とはいえ、「同じマグネシウムでも形によって吸収が変わる」という事実は、実生活でそのまま役立ちます。


CeD Labo の視点

ここから導ける実用的な結論はシンプルです。

マグネシウムのサプリは「含有量」ではなく「形(吸収率)」で選ぶ。

  • 安さ重視で酸化マグネシウムを選ぶと、表示量のわりに吸収されていない可能性がある
  • コスパと吸収のバランスならクエン酸マグネシウム
  • 胃が弱く下しやすい人は、消化器にやさしいとされるグリシン酸マグネシウムも選択肢

「ちゃんと摂っているのに足りない」を防ぐための、地味だけど効く知識です。


論文情報

  • タイトル:Higher bioavailability of magnesium citrate as compared to magnesium oxide shown by evaluation of urinary excretion and serum levels after single-dose administration in a randomized cross-over study
  • 著者・発行年:Kappeler et al., 2017
  • 掲載誌:BMC Nutrition
  • エビデンスレベル:★★★(ランダム化クロスオーバーRCT)
  • 出典:Springer / BMC Nutrition